俳句の勉強14 切字の効果

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晩 夏

二十四節気 大  暑

七十二候  土潤溽暑 つちうるおうてむしあつい

 

皆様、こんにちは

今日は『新版20週俳句入門』7週目「切字の効果」です。

 

切字の効果

 

 

勉強したこと

 

*切字と

最も代表的な切字「や」「かな」「けり」

 

 

*切字はひびく

 

夕東風や海の船ゐる隅田川

夕東風に海の船ゐる隅田川

 

遠山に日の当たりたる枯野かな

遠山に日の当たりたる枯野行く

 

短日の梢微塵にくれにけり

短日の梢微塵にくれてゆく

 

それぞれ二つの句を並べてみると、たった一字の違いだが、

声に出して朗誦してみるとハッキリと違いがわかる。

切字があることで、余韻や余情が感じられる。しかし、改作した方は

読み終わったとたんに読者の関心はプツンと切れてしまう。

切字があることによって、

俳句がいかにも俳句らしい型になっている、俳句らしい風格を持っている

ことを感じる。

 

 

*切字の三要素

1 詠嘆

2 省略

3 格調

 

 

1 詠嘆 

   

夕東風や海の船ゐる隅田川

「夕東風や」の「や」には〈ああ、この夕風の感じ、もうまぎれもなく春がやってきたのだ〉という、たしかに春を感じとったよろこびが含まれている。そのよろこびも詠嘆。

 

 

ふるさとの沼のにほひや蛇苺 

ふるさとへ久しぶりに帰って、子どもの頃よく遊んだ沼のほとりに立った。夏の日ざしに照らされて、沼の水は特有の匂いを放っている。作者は〈そうだ、この匂いだ、何年も前に嗅いだ匂いと全く同じだ、なつかしいな〉そう感じながら、ふと足もとに目をやると、これも昔どおりに蛇苺〈夏季〉の赤い実が、五つ六つと見えたという意。 〈 〉でくくった部分のおもいが、切字「や」に集約されている。

  

詠嘆が切字に集約されている点では、「や」も「かな」「けり」も全く変わらない。

  

流れ行く大根の葉の早さかな

水の流れに乗って流れていく大根の葉のみどりが、あざやかに印象に残る。

「早さかな」はスピードを讃えているのではなく、水流に乗った大根の葉の流れよう、その流動感といったことに、ハッと心を動かしているのである。

 

桐一葉日当たりながら落ちにけり 

「落ちにけり」の「けり」に、〈ああ、秋だ〉のおもいが蔵されていて、これを読む私たちも一緒になって、〈ああ、秋だ〉と思わせてくれる。 

 

 

 

2 省略

 

俳句は一七音しかない。あれも言いたい、これも詠おうと考えたら、収集がつかない。したがって俳句は「省略する」ことが大事。

いろいろな省略法があるが、一番の担い手が切字である。切字によって必要以外のものは全部、作品の後ろに伏せておくのである。

 

 

五月雨や蕗浸しある山の湖

山の湖の汀に蕗の束が浸してある。そこへ小止みなく五月雨が降りつづいている。

「五月雨や」には、五月雨だから当然、〈ああ、よく降ることよ〉の詠嘆がある。がそれと同時に、湖をかこむ山のみどりも、雨でいっそうあざやかに見えるし、そんな季節だから湖もひっそりしずまりかえっている、といった周辺のたたずまいも、おのずから見えてくるはたらきをもっている。

 

 

冬の蟇(ひき)川にはなてば泳ぎけり

 冬の土を鍬で掘っていたら、冬眠中の蟇がいた。それを手に取って、ちょっといたずらごころで川に放ったら、あわれにも蟇は泳いだよ、という意。「泳ぎけり」は平凡な一動作のようだけれど、あわれに思う気持ちや、本能というのは大したものだ、という驚きや、作者の小さな後悔といったことが、次々に想われてくる。みんな「けり」のはたらきである。

 

 

 

3 格調 

 

(原句)雑魚散つて如月田圃澄めるかな

(改作)雑魚散つて如月田圃澄んでゐる

 

(原句)津の国の減りゆく蘆や刈られけり

(改作)津の国の減りゆく蘆の刈られゆく

 

原句のほうが凛としている。

切字は凛とした姿と、朗々と誦するにふさわしいリズムを俳句に与える。

 

俳句が芭蕉によって確立されてから三百年。この間、いくたの起伏を経てこんにちの盛況に至ったのは、五・七・五と季語と切字の相乗効果の見事さが多くの人の心をとらえてきたから。このうちどれか一つが欠けても駄目。

 

確固とした切字への信頼感を持つこと。

 

次週からの実作の前に、これまでの7週間の内容をしっかり復習しておくこと。

 

 

〈今週の暗誦句〉

    庭すこし踏みて元日暮れにけり

    数珠屋から母に別れて春日かな

    ぬかるみに夜風ひろごる朧かな

    月見草離れ離れに夜明けたり

               渡辺水巴

 

 

 

【きょうの一句】

     遠くにて水の輝く晩夏かな

               高柳重信