仲 冬
二十四節気 大 雪
七十二候 熊蟄穴 くまあなにこもる
皆様、こんにちは
最近、俳句の勉強も俳句づくりもしばらくお休みしていましたが、頑張って続けていきたいと思います。
今回は藤田湘子『新版20週俳句入門』の第12週目「二つ目の型へ進む」です。
勉強したこと
*〔型・その2〕
お手本の句
寄せ書の灯(ひ)を吹く風や雨蛙 渡辺水巴
ふるさとの沼のにほひや蛇苺 水原秋桜子
真下なる天龍川や蕨狩(わらびがり) 富安風生
共通点は、中七の終わりに切字「や」があること、下五が季語で名詞止めになっていることの二点。
この型を〔型・その2〕とする。
(上 五) (中 七) (下 五)
や 季語(名詞)
寄せ書の 灯を吹く風や 雨 蛙
B A
AとBの配合の句である。Bのフレーズが季語「雨蛙」と直接関わりのない内容である。
つまり、〔型・その1〕を逆にした型である。
けれども、〔型・その1〕では下五にがっちりと名詞をおいていた。
〈男がつくる手打そば〉
〈衣干したる雑木林〉
こうした手打そばや雑木林がひとつらねのフレーズの要となっていただが、〔型・その2〕ではそれが明確ではない。したがって、〔型・その2〕のフレーズ(B)を作るときは、上五・中七のフレーズによって、ある風景なり人事の場面のイメージが、読者になるべく具体的に浮かんでくるような作り方をすること。
上五・中七によって一つの情景がうかび、それが下五の季語とひびき合っていっそう鮮明になる、というように。
*〔型・その2〕の応用型
基本型と同じく下五に季語のおかれた例
淋しさにまた銅鑼(どら)うつや鹿火守(かびやもり) 原石鼎
ひつぱれる糸まつすぐや甲虫 高野素十
校塔(こうとう)に鳩多き日や卒業す 中村草田男
上五や中七に季語があって、下五は季語以外の言葉から成っている句
炎天の空美しや高野山 高浜虚子
たんぽぽの大きな花や薄曇(うすぐもり) 松本たかし
かりそめに燈籠(とうろう)おくや草の中 飯田蛇笏
以上の6句は「や」のまえと後ろで、意味、内容がそれほど大きく変わっていない。どういうことかというと、〈季語〉に直接切字「や」がついていないからだが、この「や」は主として、一句の韻文としてのリズムを整えるために使われているのである。もちろん切字だから、詠嘆もあれば省略もあるが、主目的はリズム感の高揚にある。
例えば、上の例句を「や」使わずに作り替えてみると、メリハリのない意味だけをつらねた句になってしまう。
淋しさにまた銅鑼をうつ鹿火屋守
ひつぱれる糸まつすぐに甲虫
炎天の空うつくしく高野山
かりそめに燈籠をおく草の中
*古臭さ・常識・独善はいけない
うまくいかない作り方三つ
①たいへん古臭い対象に目を向けたもの
②幼稚なことや、常識極まりないことを詠んだもの
③観念的、独善的なフレーズをふりまわしているもの
①の作例
落葉降る水子地蔵の風車
秋も逝く読経の声と木魚かな
今の時代、俳句=神社・仏閣(“わび”“さび”)は古い。学校の教科書に載っている古い俳人の作品などの影響を受けず、現代に生きる作者自身の興味を惹く対象を、ためらわず作品化することに専念すること。
②の作例
孫とゐてうれしきビール重ねけり
夫婦して愛の絆の雑煮かな
作品が幼稚ぽくなるのは、子どもや孫を詠んだとき。
③の作例
万緑と対話ができて村愛す
おそ咲きの朝顔われに微笑みて
郵便夫木犀の香もとどけくる
最初は感動したかもしれないが、それを素直にフレーズにしないで、かっこよくみせようとしてしまっている。
「俳句を作る」態度の基本は、対象に素直に接し、素直に感動を表現すること。そうした詠い方の中に、しぜんに作者の生き方やおもいが出てくるもの。「写生」「描写」が俳句の作り方の基本だが、それ以前に、作者の純粋な素直な態度が大切である。
・宿題 〔型・その2〕で2句作ること
〈今週の暗誦句〉
春の灯や女は持たぬのどぼとけ
ところてん煙のごとく沈みをり
日野草城
花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ
谺(こだま)して山ほととぎすほしいまゝ
杉田久女
【今日の一句】
水仙は密に挿しても孤なる花
大橋敦子