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俳句の勉強23 第17週 俳句は切字響けり

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仲   春

二十四節気 啓  蟄

七十二候  蟄虫啓戸  すごもりむしとをひらく

 

皆様、こんにちは

今回は、藤田湘子『新版20週俳句入門』第17週「俳句は切字響けり」を勉強しました。

 

 

*〔型・その4〕

代表的な切字「けり」を学ぶ。

〈例句〉

はつあらし佐渡より味噌のとゞきけり  久保田万太郎

みぞれ雪涙にかぎりありにけり 橋本多佳子

水馬(あめんぼう)弁天堂は荒れにけり 川端茅舎

 

 上 五    中 七   下 五

季語(名詞)        動詞+けり 

 

これを〔型・その4〕とする。

 

 上 五     中 七    下 五

はつあらし  佐渡より味噌の  とゞきけり

 (A)         (B)  

 

この〔型その・4〕も、季語(A)とその他の(B)のフレーズとの配合・二物衝撃の型である。

 

 

*「かな」と「けり」の違い

「かな」は余情が、一句を読み終わったあと上五・中七へ戻って、ふたたび十七音全体を包むようなはたらきがある。しかしその余情余韻が生まれてくるのは、大きな省略があった場合にかぎる。「あれも言いたい」「これも一句の中に入れたい」という思いがあるが、「あとは切字に托すほかない」と断念して作る。そういう態度で「かな」を用いれば、「かな」は作者の省略したあれこれを、余情余韻という形で読者に伝えてくれる。〈「かな」は沈黙の切字〉である。

 

「かな」が沈黙の切字ならば、〈「けり」は決断の切字〉である。「こう言うんだ」とはじめからきめて、そのおもいを一句のリズム、とりわけ下五の切字「けり」に托したからである。「けり」はきっぱり使う。言いよどんではその効果を発揮しない。

「かな」は名詞にかぎらず動詞・形容詞ほかにもつく融通性があるが、「けり」は動詞にしかつかない。その動詞の中でも、「咲く」「歩く」「泣く」などのように「語尾」に「く」「ぐ」のつく動詞に「けり」を用いるときは、二種類の言いかたができるので要注意。

〈例〉    (A)     (B)

泣く    泣きにけり    泣けり

歩く    歩きけり     歩けり

Aのつかいかたが切字「けり」である。

 

 

*〔型・その4〕の応用型

〈例〉上五が名詞季語であっても、そこで意味の断絶がなく、中七以下にかけてずっと季語にかかわっている(ほとんど一物俳句にちかい詠い方になっている)

冬の虫ところさだめて鳴きにけり  松村蒼石

水鉄砲にも引金のありにけり  鈴木榮子

 

〈例〉上五の季語名詞に「てにをは」がついている(これでも一物俳句に近い詠い方)

雉子の眸(め)のかうかうとして売られけり 加藤楸邨

松茸の椀のつつつと動きけり  鈴木鷹夫

 

〈例〉季語が中七に変わった

草にふれ秋水(しゅうすい)走りわかれけり  中村汀女

くろがねの秋の風鈴鳴りにけり  飯田蛇笏

 

 

*「けり」の要点

切字「けり」にはきっぱりした決意が必要。そしてひと息に言い放ったと感じさせる、つよいリズムが要求される。「けり」を使うときのポイントは、〈上五・中七勝負〉の作り方である。

〈例〉

はつあらし←→佐渡の味噌(とゞきけり)

水馬←→弁天堂(荒れにけり)                                  

このように上五と中七だけですでに二物の衝撃が行われ、そしてそれぞれの句の核はこの部分で完成されている。この二句の下五(カッコ内)にとても平易な言葉がおかれていても、一句の手応えが相当なのは、上五・中七の衝撃のもたらす核の密度が高いからである。

「けり」を用いるべきと感じたときは、上五・中七に重い言葉を持っていく。〈重い言葉〉と言うのは、イメージのひろがりの大きい言葉であり、ものを表す漢字(名詞)である。あとの下五はその核の密度にふさわしいひびきをもった動詞を考える。その動詞は素朴で明快な動詞を使う。そのほうが「けり」のきっぱりとした切れ味が生きてくる。

 

 

 〈今週の暗誦句〉

天の川鷹は飼はれて眠りをり

鮟鱇(あんこう)の骨まで凍ててぶちきらる

            加藤楸邨

 

中年や独語(どくご)おどろく冬の坂

中年や遠くみのれる夜の桃

            西東三鬼

 

【今日の一句】

鶯のけはひ興りて鳴きにけり

            中村草田男