初 春
二十四節気 立 春
七十二候 黄鶯睍睆 うぐいすなく
皆様、こんにちは
今回は、藤田湘子『新版20週俳句入門』第15週目「デリケートな「かな」」を勉強しました。
勉強したこと
*〔型・その3〕
「かな」 基本的な用い方
<例句>
金色の佛ぞおはす蕨(わらび)かな 水原秋桜子
傘もつ手つめたくなりし牡丹かな 富安風生
ふるさとを去(い)ぬ日来向(きむこ)ふ芙蓉かな 芝不器男
オムレツが上手に焼けて落葉かな 草間時彦
帯解きてつかれいでたる蛍かな 久保田万太郎
構成
〈堂内(室内)のもの・状態〉 = 〈堂外(室外)・の季語(名詞)+かな〉
(上 五) (中 七) (下 五)
季語(名詞)かな
金色の 佛ぞおはす 蕨(名詞)かな
B A
〔型・その3〕も今までの〔型・その1〕〔型・その2〕と同様に、名詞季語を含む下五と、季語を含まない上五・中七とは別の内容を表している。つまり、季語「蕨」(A)と「金色の佛ぞおはす」(B)との配合、二物衝撃である。
*漢字・平仮名・片仮名
・「や」「かな」 は併用しない
・「かな」を下五に用いるときは、上五や中七につよい切字を使わない。
上五や中七に切字を入れると、せっかくの「かな」がひびかなくなってしまう。「かな」は下五に使ったとき、一句全体をやわらかく包みこむという性質を持っている。一句五・七・五を読み終わったときの余韻がふたたび上五・中七へ戻って、十七音をしずかな韻律の波にただよわせてくれる。しかし、上五や中七につよい切字が入ると、そういった余韻が消えてしまう。
〈 例〉
金色の佛ぞおはす蕨かな → 金色の佛ゐませり蕨かな
傘もつ手つめたくなりし牡丹かな → 傘もつ手つめたかりけり牡丹かな
帯解きてつかれいでたる蛍かな → 帯解けりつかれいでたる蛍かな
最近、俳句の中に外来片仮名語が急増しているが、日本語は、漢字、平仮名、片仮名の順で〈重さ〉を持っている。片仮名語はたいへん軽い印象をあたえる。軽い言葉が、わずか十七音の中の何音かを占める傾向がつよまると、俳句作品は軽くなってしまう。本来の日本語の表現にかえてみる。
*風格と品と
最近は長い言葉を簡略して短くした言葉が多い。(例)私鉄、入試、学割‥。しかし、日常生活には便利だからそれでよいが、詩の言葉としては「品」がない。避けるべきである。
*〔型・その3〕 応用型
「かな」は基本的には、三音の名詞季語について、下五におかれたときに一番効果的である。しかし、基本型のように画然とした(A)(B)の二物衝撃的な使われ方は近ごろ少なくなって、むしろ、一物俳句的な作り方で下五におかれることが多くなりつつある。
〈例句〉
はなびらの欠けて久しき野菊かな 後藤夜半
てのひらににうけて全(まった)き熟柿かな 木下夕爾
躓(つまず)いてかへり見すれば浮葉かな 後藤綾子
また、三音を超えて五音・六音といった長い季語に「かな」がつくと、中七から下五へ句またがりでおかれることが定着している。下線は季語。
〈例句〉
いつしかにうせゆく針の供養かな 松本たかし
茶道具の一荷(いっか)も時代祭かな 岸風三桜
風の街見てゐる仕事始かな 村沢夏風
このほか、季語ではない名詞についた場合や、名詞以外についた場合など、「かな」の使いみちはさまざまであり、多彩である。
〈例句〉
鳥のうちの鷹に生れし汝かな 橋本鶏二
五月闇(さつきやみ)より石神井(しゃくじい)の流れかな 川端茅舎
牡丹雪その夜の妻のにほふかな 石田波郷
「かな」はきっちり五・七・五で詠んだ方がおさまりがよい。
かなは下五に用いてこそ一句全体を余韻で包む効果が出る。
〈今週の暗誦句〉
初蝶(はつちょう)やわが三十(さんじゅう)の袖袂(そでたもと)
遠足や出羽(でわ)の童(わらべ)に出羽の山
葛(くず)咲くや嬬恋村(つまごいむら)の字(あざ)いくつ
蓼科(たてしな)は被(かず)く雲かも冬隣
石田波郷
【今日の一句】
外(と)にも出よ触るるばかりに春の月
中村汀女