初 冬
二十四節気 立 冬
七十二候 地始凍 ちはじめてこおる
皆様、こんにちは
藤田湘子『新版20週俳句入門』の第11週目 「上五の切り方」を勉強したいと思います。
勉強したこと
*「や」以外の切字で作る
上五を「や」以外の切字を用いて切った例句。原型は〔型・その1〕である。すなわち、これらも応用の型である。また、中七・下五のフレーズは上五の季語と関係なく作ること。
桐咲けり天守に靴の音あゆむ 山口誓子
蓬(よもぎ)萌(も)ゆ憶良旅人に亦(また)吾(われ)に 竹下しづの女
暖かし猫につきたる子の刈毛(かりげ) 田川飛旅子
蚊帳(かや)青し息つまるまで思ひ追ふ 上村占魚
雪やまずひとりとなりて出羽の酒 角川源義
雪嶺(せつれい)よ女ひらりと船に乗る 石田波郷
秋炉(あきろ)あり逢いたき人に逢ひ得(え)つつ 松本たかし
燕(つばめ)来(き)ぬ文字ちらし書く爪哇更紗(ジャワさらさ) 水原秋桜子
その他にも「野分せり」「晩夏なり」「冬深し」「霜強し」「道寒し」「月赤し」「松涼し」「春逝けり」「鵯(ひよ)鳴けり」などがある。
*リズム感と格調
「や」には一句の韻文としてリズム感をあたえ、格調をととのえることを主目的としたはたらきもある。ただし例句のような「や」の使い方は一物配合の句であり、初心者にはまだ難しいので避けた方がよい。
(例句)
大雪や港の外を降りかくし 松根東洋城
寒木瓜(かんぼけ)や先(さ)きの蕾(つぼみ)に花移る 及川貞
流燈(りゅうとう)や一つにはかにさかのぼる 飯田蛇笏
大雪や→大雪は 寒木瓜や→寒木瓜の 流燈や→流燈の
切字「や」を「てにをは」にかえて読むことができるが、どの句も韻文らしいひびきが消えてしまう。つまりこれらの「や」はみな句にリズム感をあたえ、格調をととのえるはたらきをしている。これらの句はみな昭和二十年以前の句で、いわゆる戦前にはこういう「や」の句が多かったが、今では少なくなった。その原因は①切字軽視の傾向が広まった ②韻文としての俳句の自覚が薄くなった ことに尽きる。
*「ガム嚙んでゐる変声期」
他にもある「上五」で切る作り方
例句の上五は季語ではない。季語(下線部)は下五や中七にある。こういう作り方のときは、季語は上五にないから、上五の言葉にかかわることを中七・上五で述べてもさしつかえないない。 (例句)
吊橋(つりはし)や百歩(ひゃっぽ)の宙(ちゅう)の秋の風 水原秋桜子
大阪やけぶりの上にいわし雲 阿波野青畝
あけぼのや花に会(あ)はんと肌着更(はだぎか)へ 大野林火
*〔型・その1〕はふるさと型
[上五]四文字の季語+や[中七]下五の名詞のことをいう[下五]五文字の名詞止め
「四つの型」のひとつ〔型・その1〕はすべての型の基本形で俳句そのものといった型である。百句二百句と作って、何かをハッと感じると、すぐその型にそってスッと言葉が来るくらいになるようにする。なぜならば、この型をばっちり身につけておけば、将来ずっと〈ふるさと〉の役目を果してくれるから。何年か続けていると、スランプがやってきて、大きな壁にぶち当り自分の作句に自信を無くしてしまうことがある。そんなときは初心にかえれで、もう一度〔型・その1〕の作り方を実行してみる。一番基本の基本のところへ戻ってきて、やり直してみる。〔型・その1〕にはごく自然に壁を突きやぶることができる力がある。この型をたっぷり自分の体に染みこませる努力をすること。
〈今週の暗誦句〉
朝顔の双葉(ふたば)のどこか濡れゐたる
翅(はね)わつててんたう虫の飛びいづる
まつすぐの道にいでけり秋の暮
づかづかと来て踊子(おどりこ)にさゝやける
高野素十
【今日の一句】
白菊のまとふはおのがひかりのみ
水原秋桜子