晩 春
十四節気 穀 雨
七十二候 霜止出苗 しもやみてなえいずる
皆様、こんにちは
今回は『新版20週俳句入門』18週目「俳句を上手に作る法」を勉強しました。
*俳句上達のコツ
ポイントは「季語」
季語の使い方で一句の成否の50%以上を左右する。
・季語(A)とその他のフレーズ(B)とは近づけてはいけない。離して使うことを心がけよ。
・季語を修飾しても効果はない。季語に余分な言葉を使わぬことが大切。
・季語に使われてはいけない。作者が季語を使いこなすのである。
・季語の方を見て作句するな。季語の心でほかのものを見よ。
*季語を離して使う
〈例句〉
黒板に文字なにもなし夏休
綿菓子の手になつかしや秋祭
春愁やピアノ弾く指ためらへる
一句め
夏休〈だから〉でつながる形はだめ。季語を説明する結果になるから。こういう場合、上五・中七はそのままにしておいて、季語を離すようにするとよい。〈だから〉を消すのである。
→黒板に文字なにもなし百日紅
→黒板に文字なにもなし秋祭
「夏休」だと上五・中七のフレーズと直結して〈だから〉になったが、 「百日紅」「秋祭」にすると、一呼吸おいてフレーズと結びついている。一呼吸はいわば間であり余韻である。こういう間を考えた季語を選ぶことが、上手への道。
二句め
「祭」だから「綿菓子」が当たりまえ。一句めにならって間をつくる。
→綿菓子を手になつかしや秋晴るる
これでは祭りか運動会か文化祭かハッキリしないが、それは明確でなくていい。なぜなら、この句の狙いは「綿菓子」のなつかしさにあるから。
三句め
これも「春愁」←→「指ためらへる」の関係がストレート。これも季語をさりげないものにして、背後に憂いを感じさせるほうがいいが、「ピアノを弾く指ためらへる」の印象は、もうかなりの憂いを含んでいる。
→春宵やピアノ弾く指ためらへる 「春宵」・・甘美過ぎて俗っぽい
→早春やピアノ弾く指ためらへる 「早春」・・「早春」だとまだ寒さが残るので、「ためらへる」が、心のためらいでなく「寒さのため」と勘違いされそう。
→惜春やピアノ弾く指ためらへる 「惜春」がよい。「春ふかし」でもよい。
以上三例でわかるように、二物の(A)(B)がストレートに結びついてくると、軽薄になる。深い余韻が生まれない。つまり、いい間が必要である。このいい間ということを、不即不離(ふそくふり)という。「即(つ)かず離れず」ということ。しかしこれはじつにむつかしい。自分で俳句を作りながら、失敗したり成功したりして、その間合いのコツを感じとっていくよりほかない。言ってみれば、俳句の勉強というのは、この間を覚える勉強だとしても過言ではない。
*ストップ・モーション
例句
深雪晴紅茶のレモン浮にけり 美木子
→深雪晴紅茶のレモン匂いけり
いぬふぐりあまた見つけて通りけり 美木子
→いぬふぐりあまた見つけて跼(かが)みけり
前句
〈深雪晴←→紅茶のレモン〉の二物がよく衝撃している。下五は「匂いけり」のほうが、「晴」とひびき合う。
後句
「通りけり」では、そこを過ぎてきたことになる。すると、たくさんのイヌフグリの花がうすれてしまう。イヌフグリの咲いた道の辺のイメージが、読者にはっきりと分からないと句の力は弱くなるから、ここはストップ・モーション。フィルムの回転を止める。したがって作者も止まる。すると「跼みにけり」が適切。
*先人の名句を読む
先人の句を読んで覚えることは重要である。この勉強は俳句の作りの大事な基礎づくりである。
【今日の暗誦句】
曇り来し昆布干場の野菊かな
七夕や髪ぬれしまま人に逢ふ 橋本多佳子
夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり
薄紅葉恋人ならば烏帽子で来(こ) 三橋鷹女
【今日の一句】
春暁のうす紙ほどの寒さかな 細見綾子