母の背に漂う香り花蜜柑
森下典子さんの『猫といっしょにいるだけで』を読んだ。
猫好きではなかった母娘の家の庭に、野良猫が5匹の子猫を産む。そこから始まる猫との暮らしの物語だ。
猫を飼ったことのある人には、”猫あるある”で、私も実家で飼っていた猫のことを思い出して、涙が出た。
その中でハッとした文章がある。
「毎日子猫たちを見ていると、一個一個、全部ちがう。崖のシダの葉の間から軍手でつかんだ時も、太郎は腕白だけど小心で、次郎は悠然とした男前で、クロは人懐っこかった。しずちゃんはマイペースで、ナナはか弱くおとなしかった。生み落とされた朝から、もう彼らは、性格も行動も一人一人違っていた。彼らはでき上がった自分に生まれ、その自分を生きているのだった。」
「でき上がった自分に生まれ、その自分を生きる」
人間もそうなのでは。きっとそう。
感謝