野良猫の短きしっぽ藤の花
自分の俳句の下手さに落ち込んで、俳句を作る気がなくなってしまった。
好きな津川絵理子さんの『夜の水平線』をもう一度読んだ。
簡単な言葉にみずみずしい感性が溢れている。
こんな句が詠めたらいいな。
『夜の水平線 津川絵理子句集』より
流し台乾きし午後を鳥帰る
柱よりはみ出て蝉の片眼かな
近づいてくる秋の蚊のわらひごゑ
金盥ぐわんと水をこぼし冬
万緑や礼をするとき目をつむり
帰路はよく話す青年韮の花
春寒し順番を待つパイプ椅子
呼鈴を押す夏帽子二つ折
立春や野に触れてゆく鳥の腹
ペリカンの飛ばぬ肩幅秋の風
返り花盲導犬は犬を見ず
金屏風話上手の人ばかり
ジェット機の音捨ててゆく冬青空
遠ざかる写真の日付枇杷の花
寒の雨指太く封破りたる
風を生むフラダンスの手春隣
夕虹や紙の棺に木の墓標
立春や腕より長きパンを買ふ
亀の子の練習船に飼はれけり
子を先に歩かせてゐる夕涼み
秋風や人避けてゆく迷ひ犬
ポケットの木の実の中の鍵探す
短日や紙鍵盤に指の音
津川絵理子さんは1968年、明石生まれ。関西学院大学社会学部卒業。1991年「南風」入会、鷲谷七菜子、山上樹実雄に師事。2006年、第一句集『和音』刊行。2007年『和音』により第30回俳人協会新人賞、作品「春の猫」50句により第53回角川俳句賞受賞。2012年、第二句集『はじまりの樹』を刊行。2013年、『はじまりの樹』により第4田中裕明賞、第1回星野立子賞を受賞。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
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