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俳句の勉強26 第19週目「をり」「なり」「たり」  

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皆様、こんにちは

久しぶりに藤田湘子『新版20週俳句入門』の19週目(やっと19週目!)を勉強しました。  

 

*内容に応じた使い分け

「けり」と似た切り方に、「をり」「なり」「たり」がある。

 

「をり」は口語で言えば「ゐる」だから、今そのことがそこで行われている、その状態がそのままつづいている、といったことを表すときに用いる。おおむねおだやかな情趣。

野分あと口のゆるびて睡りをり   石田波郷

囀りの下に僧の子遊びをり   角川春樹 

 

 

「なり」は口語で「だ」「である」という断定の意。次の「たり」と同じだが、「たり」とくらべて自然ですんなりしている。しかし、使い方一つで「たり」よりつよくひびく場合もある。

かりがねのあまりに高く帰るなり  前田普羅

雪催(ゆきもよい)松の生傷匂ふなり 上田五千石 

 

 

「たり」は「なり」と同じ意だが、この語感から察せられるように、重くつよいひびきがある。したがって、内容のやわらかいもの、穏やかなものを表現するには、ふさわしくない。

大寒(だいかん)と敵(かたき)のごとく対(むか)ひたり  富安風生

羅(うすもの)の下きびしくも縛(ばく)したり  山口青邨

 

迷った時は四通りの句を書いて机上におき、朝夕暗唱すれば自分の意にかなった下五が選べる。手抜き、妥協はしない。

 

 

 

 

*旅の俳句

「旅の宿」「山の宿」「山の駅」は初心の作者が一度は用いる常套語。場所を示しただけの報告になってしまう。「旅」や「宿」の文字にこだわらずに詠うのが、より上質の句にする決め手。

新蕎麦をすすりてをりぬ旅の宿  旅水

新蕎麦をすすりてをりぬ木曽泊まり 

 

「旅」を言うより地名、固有名詞を用いたほうが、俳句の姿がはっきりする。

その土地をしっかり踏んだつもりで作る。

 

 

 

*吟行ということ

吟行とは、和歌・俳句を作るため郊外や名所・旧蹟などに出かけること。

吟行へ行って句を作る修練を積むこと。日常生活の中だけで取材していると、素材も発想も固定化してしまう。時には目新しい風景や行事に接し、ふだんはふれることのない季語も見たりして、新鮮な感動を呼びさますことも大切。おおげさに考えず、「ちょっと行ってくる」ていどのところに、詠いやすい場所を一つ二つきめておくとよい。

そのような場所(吟行地)がきめてあると、四季の変化はもちろんのこと、同じ季節でも、前年、前前年との違いやわずかな変化が分かり、そのたびに自然の奥行きの深さを教えられることがある。また、そういうことをかさねて、自然を見る眼をやしない、季語の味わいを知っていく。

名所・旧跡よりも、近くの林や湖沼、丘、海岸、川などの平凡な場所に、吟行地を作っておく。

 

 

 

*漢字は重く片仮名は軽い

俳句を書くときには、視覚的印象も大切にしなければいけない。漢字は重く堅い印象、平仮名はやわらかく片仮名は軽い。そうした点を考慮に入れて,内容にふさわしい漢字・平仮名・片仮名の組み合わせにする。

 

 

 

【今週の暗誦句】

吹かれきし野分の蜂にさゝれたり
大仏の冬日は山に移りけり   星野立子

 

梅干して人は日陰にかくれけり

晩涼や運河の波のややあらく  中村汀女

 

 

【好きな一句】

炎天より僧ひとり乗り岐阜羽島  森澄雄